34.スカウトソングについて
大阪の南東地区でスカウトソングの練習会をやる、という記事を見て、これは良い計画だと思った。それで、思いつくままに、スカウトソングについて書くことにする。
ある年の夏、私のところ(那須野々営場)に、カブスカウトが何コ隊も合宿訓練に来た。平生は淋しい、この大きな森も、急に若い人たちの声で賑やかになった。夏分なら最大限300人位舎営出来るここの設備も、ほとんどフルに活用された。隊によって皆それぞれの特色があった。
私は、だまって見ていたのだが、結局、一つの重大なことを発見した。それは、盛んに歌っている隊のコドモは、自発活動が旺盛だ、と、いう結論である。これに反して歌うことを進んでやらない隊のコドモはおどおどしていて、いつも隊長の顔色をうかがって動いたり、その命令を待って動いているさまが、私の眼に強く印象された。スカウトソングの教育的価値というものは、情操教育とか、スカウト精神の発揚とか、親和力のもとになるとか、表現教育であるとか、一つの健康教育、リズムによる心身のバランスの調整とか、色々と説明され得よう。
だが、これが自発活動力のアクセルになるという見方は、私にとって全く新発見だった。これは全く偽りのないことで、気分の悪いときや、病気や心配事のあるときには、歌はうたえるものではない。そういう時には、自発活動も弱っている。これに反して気持ちのよい時には、自然に歌が口をついて出るものだ。そういう時には自発活動も旺盛だし、飯もうまい。
だからといって、楽譜を無視した歌い方や、拍子をまちがえたタクトのとり方や、ふざけた歌い方は、むしろ歌はない方がマシということになる。これは、指導の仕方によって、どうにでもなると思う。例えば「光の路」についていうと、「おうぞらを…」の出だしの「お」は第4拍から出るべきなのに、第1拍にしたタクトのまちがったとり方――これは各地とも非常に多い。また「君が代」は完全な4拍子であるのに2拍子でタクトをとる人がある。これなどは楽譜を読む力がないのか。ただ、手をふって調子をとればよい、と簡単に考えている人だろうと思う。もう、こうなると、3拍子の歌曲などメチャ、メチャになる。「そなえよ、つねに」の歌が好例である。
いま一つ、ちょっとむつかしい例をとるならば、「営火の祈り」の歌。あれの、8小節から9小節にかけての「いのりは…」のところの、「い」は、8小節の第6拍である。従って、そのあと「…たちのぼりて」までは裏拍子を歌うわけになる。それは、ちょうど、アメリカ民謡のオールド・ブラックジョーの歌の、アイ、カミング…のところと同じように裏拍子になっている。然るに、一般の歌うのをきいていると「いのり…」の「い」は第9小節の第1拍に、さげて歌っている。これではこの曲の切々(せつせつ)たる楽想がこわされるのだ。
この歌曲は6拍子であり、8分音符6つで1小節になる構造なので、指導の仕方がむつかしい。私の作詞作曲になる「山鳩」の楽譜――これは、3拍子と4拍子とが入りまじっている珍しい構成である。この歌曲でタクトの練習をすると、今、私の云っていることが、よくわかると思う。
最後に、「花はかおるよ」の歌曲。これは、最もむつかしい一例である。作詞者は葛原しげる氏(現に広島県福山市に健在)作曲者は山田耕筰氏である。「ボーイスカウト歌集」10頁の楽譜の右上辺に、これが書いてないのは手落ちであるが、両者ともスカウトではない。旧日本連盟の委嘱によって作詞作曲して頂いたのである。
さて、この歌曲の4小節目「なのーか」のところの歌い方、且つはタクトのとり方――これぞ研究すべき好題目である。・・・・である。これを計算すると2/4+1/8+1/4+1/8、通分すると、4/8+1/8+2/8+1/8=8/8=4/4になる勘定。「な」は2拍、「か」は半拍になる。そこで「の」と「か」との持ち時間の工合いいかん、という点にカギがある。これは、くりかえし、くりかえし自分で4拍子のタクトをとって練習して会得すべき一例である。
(昭和30年8月30日 記)