2010年01月14日

ちーやん夜話集21「名誉について」

21.名誉について
“私は名誉にかけて次の三条の…”の、名誉にかけて――というところを、カブスカウトの月の輪の子供にどう説明したらよいか、その中でも、“名誉”をいかに説明すべきや、という質問をうけた。私は、あなたは講習会で何を教えられましたか、と、逆に質問をした。するとその人は、私はカブの講習会には行きましたが、少年部の講習会には、まだ行けませんので、何とも教えてもらっていないと答えた。その団には少年隊がないので、カブの隊長が少年部のちかいと、おきてを教えねばならないのである。こういう実例が、方々にあるのではなかろうか?

 私は数年前、ある地方の少年部指導者実修所の事前課題に“スカウトの名誉”という出題をしたことがある。
 その時の答案を見て、実はガッカリしたのである。ある者は、漢和辞典をめくって“名誉”の解説をしたのもある。しかしそれは答えになっていない。
 これに対して、私は、次の二つの点を解答の鍵とすべきだと思う。
(1)おきての第1条をよく勉強すること。
(2)“スカウティング・フォア・ボーイズ”邦訳本381頁のB-Pの示唆である。
 おきての第1はいうまでもなく、「スカウトは誠実である」この主文の下に次の説明のようなものが載っている。――スカウトの真の資格は信用され得る人間にのみ与えられる。嘘を云わず、ごまかしをせず、信頼されて託された任務を正確に行うことなどは、すべてスカウトの名誉を保つ基礎である。――と。
 前記のとおり、この一文は、説明文のように思えるが、昭和22年~23年、これを制定した時の委員会は、このながたらしい文言をも、主文だと説明している。ただ、全主文を暗記することは、むつかしいので、暗記は前の主文だけでよい、というとり決めであつかったことは、その委員会の中心であった故中野忠八先生が昭和23年夏の、戦後最初の宮島実修所において講義をされたので明瞭である。しかるに、その後の講習会などにおいては、この全体が主文であることを、いつの間にか忘れて、説明文であるかのごとき講義をした向きもある。
 要するに、たとえこれが、説明文であったにせよ、大多数の指導者もスカウトも、これを読んでいない。読んでいるならば、スカウトは、人から信用されることを名誉とする。信用されるためには、ウソをつかない。すなわち誠実である。だから名誉にかけてということは、正札通り、カケネなしということになろう。
 また、これは米国のおきて第1とまったく同じものである。米国のは、ただ“スカウトは、信頼に価する”という表現になっている。日本は、それを、誠実であるといいかえただけの違い。
 英国のおきて第1は“スカウトの名誉は信頼されることにある”――云い換えれば、“スカウトは信頼されることを名誉とする”となろう。
 誠実――信頼――名誉、という三つの関連によって、明確な答えが出るはず。
 B-Pが“スカウティング・フォア・ボーイズ”に書いてある示唆は、非常に暗示的である。要するに船が難破、沈没した時、船長がもし真先にわが身の安全をはかって船客を放っといて逃げるならばそんな信頼の出来ない船に生命をかけ、船賃まで出して乗る馬鹿はない。と云う云い方をしている。
 以上で大体いいつくしたと思うが、私はこの一事から見てもスカウト教育上、大変大切な事柄が、案外なおざりにされたり、早や飲み込みされたり、伝達不十分にされているのではあるまいか、という気がする。いいかげんな、お茶をにごしたような教え方を、厳にいましめたいものと思う。
(昭和34年12月1日 記)

Posted by tsutsumi at 2010年01月14日 09:14
コメント